「秋もどうせ黒点病が出ますので、今のうちに殺菌剤を土壌灌水しておくのはどうでしょうか?」

こういう怖ろしい相談が来ました。
こんな馬鹿げたことはもう誰もしていないと思いますが…

今回は、常在菌と非常在菌の話をしてみます。

日本のバラ栽培にとって、うどんこ菌や黒点菌、ベト病菌、灰色カビ病菌、サビ病菌などは常在菌です。
日本だとどこにでも存在している菌ということですね。

一方、根頭癌腫菌は非常在菌です。
媒体となる植物が存在しない限り、この菌が常在することはありません。

これ、人間の病気で考えてください。
コレラ菌は日本では常在菌ですか?
リオオリンピックで怖れられたジカ熱を引き起こす菌は日本では常在菌でしょうか?

これは感染者や媒介となる蚊の存在で広まることで常在菌になる恐れがあります。
しかし、侵入を食い止めることで非常在菌であり続けます。
だから、水際で防ごうと必死になるわけですよね。
でも、コレラ菌やジカ熱の菌は感染者や媒介がいないと日本では非常在菌です。

これに対して、日本で常在して人間に感染してしまう菌もあります。

菌というのは、必要不可欠な菌もあれば存在すべきではない菌もいます。
バラ栽培にとって、黒点病菌は存在して欲しくない菌ではあります。
しかし、それを消し去るというのはどういうことなのか?

人間社会では、水虫になりたくないから身体全体を除菌してしまおうという発想と同じになります。
インフルエンザに感染したからと、体内の菌すべてを除菌してしまうのと同じです。
もちろん、弊害の方が極めて高くなります。

よって、何でもそうですが常在菌と非常在菌では扱いが違ってきます。

非常在菌というのは存在してはいけない菌です。
そして、存在しなくても弊害が起こりませんので徹底駆除します。
これがバラ栽培では根頭癌腫菌です。

一方、黒点病菌というのは常在菌です。
この常在菌を徹底駆除するというのは…いかがですか?
徹底駆除したところで常在菌ですからねえ…また常在していきます。

インフルエンザが流行したからといって、街中除菌する人はいませんよね?
マスクをして、家では除菌を頑張るはずです。
じゃあ、バラはマスク代わりにマルチングして、ピキャットクリアで除菌すればいいですよね。

根頭癌腫菌は、感染苗を植えちゃうことで非常在菌が常在菌になってしまいます。
こういう場合は徹底駆除して非常在菌に戻してしまえばいいですよね。

菌の世界というのは、めったやたらと壊してはいけません。
人間もバラも、菌というのは不可欠であり不都合なものでもあります。

特に土は菌の世界なので…
不可欠な菌が失われ、やがて不都合な菌で埋め尽くされることになります。
理由は…
そこにはバラという、不都合な菌にとっての媒体があるのですから…