黒点病・黒星病の解説
黒点病と黒星病は同じ病気と考えてください。
ここからはまとめて「黒点病」とします。
・発生時期:春から秋(気温18~26度位で菌が活発になる)
・発生条件:18~26度の気温下で、長時間(5~7時間程度)葉が濡れた状態が続くと発症しやすい。
・発生箇所:株の下の方の葉に出やすい。病気の越冬もあり新芽で発症することも。
・症状 :淡褐色または黒褐色の斑点が葉の表面に表れる。やがて黄変して落葉する。
黒点病はバラにとってとても厄介な病気ですが、常在菌のため条件が揃えばどこでも出うる病気です。
しっかりとした知識を持って対処していきましょう。
黒点病の発生要因
黒点病菌は土壌のどこにでも存在する常在の糸状菌です。
この黒点病菌は、雨による土の跳ね返りや、風に飛ばされた土埃や水に含まれています。
他の病原菌とは違い、黒点病菌は葉裏の気孔から侵入します。
また、傷ついた葉っぱの場合は傷口から侵入します。トゲのあるバラは不利になります。
特に台風後などに発生しやすく、物理的防除も難しくなっています。
黒点病の蔓延要因
黒点病の黒い点は、感染してから数日おいて発症します。
よって、感染の発見が遅れ、気がついたときにはかなり蔓延している場合が多々あります。
また、バラの葉の機能が落ちてきて、バラも開花後で抵抗性が落ちた開花後、6月頃に蔓延時期を迎えます。
抵抗しきれず、株全体に蔓延してしまいます。
開花後ではなくても、バラの活性が低くなってしまうとすぐに感染・発症します。
強風や、台風などで葉っぱが多く傷むと、次々と感染していきます。
ただ、葉っぱの傷跡は黒点病の症状と似ていることから勘違いしやすくもなっています。
よほど酷く感染・蔓延させてしまった株は、春の新芽にすぐ黒点病を発症する場合があります。
黒点病への抵抗力を無くしてしまっており、別の株への感染源となり蔓延させる要因となります。
感染しやすい品種があります。
強健品種と呼ばれている品種であっても、黒点病感染しやすい品種はたくさんあります。
黒点病の無農薬・オーガニック対策
1.水の供給
バラの活性が落ちると黒点病にかかりやすくなります。
軽い水涸れでもバラの活性は落ちますので、注意してください。
葉っぱの蒸散パワーが強いと黒点病への抵抗力も高まります。
2.除菌・洗浄
強風を受けた場合、雨が降った後は、バラを綺麗に洗い流してください。
付着した有機物や土埃りにも黒点菌は潜んでいます。
特に葉裏はしっかり洗い流しましょう。
長雨の時は、雨の合間を狙ってピキャットクリアを散布するのも有効です。
菌の増殖を抑えます。
マルチング材もしっかり洗い流します。
マルチング材は土の跳ね返りを防ぎますが、マルチング材自体に黒点菌が潜伏します。
このマルチング材を除菌することは、有機栽培では絶対にできない土壌消毒と同じ効果が得られます。
また、ピキャットクリアの定期撒布は黒点病が蔓延してしまっても続けてください。
黒点菌を爆発的に増やさないことが大切です。
3.土作り
病気全般、窒素過多やカルシウム不足は病気の抵抗力を弱めます。
また、土が壊れるとバラの活性にも大きく影響します。
原則的に保水率が高くなる黒土は黒点菌が多くなります。
土を入れ替える必要はありませんが、保水率を低める工夫を考えてみましょう。
黒点菌は常在菌ですが、多くの微生物のいる環境にすることで増えすぎることを防ぎます。
好気性土壌を保ち、土のpH値も弱酸性で安定させましょう。
バイオセットやリバイバルの常用は有用菌の増殖を促進します。
4.病害虫防除
物理的防除を多用していきます。
感染・発症した葉っぱには黒点菌が増殖していきますので、早めに取り除きます。
土に落ちた葉っぱもこまめに掃除して取り除きましょう。
活性の低い枝は、あらかじめ切ってしまいます。
一番感染しやすいので、あらかじめ切ってしまうことで感染予防になります。
葉っぱがたくさん付いているとバラはとても見栄えが良くなります。
しかし、黒点病も蔓延しやすくなります。
下葉を中心に、古い葉っぱはあらかじめ整理することでも黒点病を防ぐことができます。
毎年出る場合は、やってみてください。
黒点病にかかりやすい品種は風上には植えないようにします。
これが風上にあると、風下のバラに黒点菌が飛んでいきます。
マルチングは土の跳ね返りを防止します。
庭全体で土がむき出しになっている箇所を無くしていきましょう。
マルチングしない場所は園路にしたり、防草シートで覆い隠すことも考えます。
感染発症してもピキャットクリアを撒布していきましょう。
黒点菌をあらい流すことで他への感染を防いでいきます。
5.栄養管理
バラの活性が落ちたときに窒素が効くと黒点病への抵抗力はさらに落ちます。
まずはケアし、バラの活性を取り戻してから窒素を効かせていきます。
活性が落ちた状態での肥料過多は蔓延しやすくなります。
カルシウム補給は黒点病への抵抗力を高めます。
しっかり定期撒布して補給していきましょう。
また、ミネラル分(リバイバル)も欠乏することなく定期補給しておきましょう。
黒点病や病原性に対する抵抗物質として有名な酵素「キチナーゼ」はキトサンを放線菌が分解することでも作られます。
このキトサンは、ぼかし肥料に含まれていますので、あえて与えなくても大丈夫です。
6.環境整備
雨が当たらない所では、ほぼ黒点病は発生しません。
鉢植えで移動できる場合は、雨が当たりにくいところに移動すると感染リスクを減らせます。
地植えのバラの場合は移動が出来ないので、土がむき出しの場所はマルチング、園路にするなどしていきましょう。
自然では、バラ科の植物がある場所は土が向きだしになっていません。
湿度もできる限り抑えていくようにしていきます。
風通しが悪かったりすると、黒点病は出やすくなります。
葉が乾くのが早いだけでも、感染のリスクを減らすことが出来ます。
日当たりが悪い場所では黒点菌が居着きやすくなります。
できる限り日当たりは確保し、できない場合はピキャットクリア撒布の回数を多めにします。
病葉の掃除はこまめにやっていきましょう。
土に落ちた場合、完全に乾燥したり分解させない限り黒点菌は生き続けます。
黒点病は総力戦!
黒点病はカテゴリー1~6のすべてで対策を打ちます。
どれが効果的なのかは、これは皆さんの育てる環境や条件で違ってきます。
奮闘むなしく止められない場合は、私を現場に呼んでください。
発生要因は対処できなくても、蔓延要因で乗り越えられます。