四季咲き性のバラに行う、夏剪定を解説します。
関東南部基準では、シュラブや遅咲きの品種は8月中旬〜下旬頃、それ以外は9月上旬~中旬に行います。
最近では9月もとても暑いので、中旬以降に行っても良い場合もありますが、日照時間は確実に少なくなっていくのであまり遅くにすると咲かずに冬になってしまう場合もあります。中旬くらいまでがひとまずの目安としてみてください。
気候と品種にもよりますが、剪定してから大体45日程度で開花を迎えます。
暖かい地域で10月上旬に開花した場合は、12月中に2番花を狙えるチャンスもありますよ。
夏の剪定は、時期を揃えて良い花を咲かせるために行うと同時に、枝の整理などを行って、病害虫の発生を防ぐ目的もあります。
ぜひチャレンジしてみてください!
準備
夏の剪定は、秋のお花を、なるべく同じ時期に、キレイに咲かせるための作業です。
切り戻す事で若い枝葉を出させてバラを活性化させる狙いもあります。
つるバラや返り咲き品種は開花をコントロールできないのでやりません。
バラの系統としては、
・ハイブリッドティー、フロリバンダ、ポリアンサ、
・四季咲き性のあるオールドローズ(ポートランド系やチャイナ系など)、シュラブ
が対象となります。
剪定の時期にあまり調子の良くない株は、従来通りに切り詰めるのは避け、ある程度太さのある枝の、ぷくりとした良さそうな芽の上で切る程度にとどめて、養生をさせつつ、蕾がつけば楽しんであげましょう。
もしたくさん蕾がついたときは、すべて咲かせるとかえって疲れさせますので、数を減らしてあげると良いです。
剪定に必要なものは、
・剪定鋏
・革手袋
・ゴミ袋
・ピキャットクリア100ppmスプレー
です。
結構トゲは痛いので革手袋はあったほうがいいですよ。作業がぐんぐん進みます。
切った枝は短くしてゴミ袋で捨てます。
バラを一斉に何株も切るときは、必ず株が変わる度にピキャットクリアをハサミに吹きかけて、菌を媒介しないようにしましょう!
ミニやハンディスプレーが手頃です。
剪定例1 ジュリア(3年目ハイブリッドティー系統)
こちらの株を剪定していきます。
オレンジの線くらいまで切ります。
切る位置でよく質問をいただくのですが、まず目安になるのが、古い枝です。
今年伸びた枝は、極端に言えばどの辺りで切っても花はつきます。
(ただ、開花までの日数が変わるので深く切りすぎると咲かないこともあります)
古い枝の、今年の2番花が咲いた枝の芽で切るのが分かりやすい目安です。
株の左下の部分をアップにしてみます。
どの枝がいつに伸びたものかというと…
昨年の枝か、今年伸びた枝かは大体、枝の色や固さでわかってもらえると思います。
ということで、すぱっと切ったものがこちら
目安の高さが分かったら、あとは大体それに高さをあわせて、切っていきます。
一番花以降動いていなかった細い枝と、根元の枯れていた小枝も取り除きました。
切る枝の太さや、しっかり具合をなるべく揃えることができると、開花の時期を揃えやすくなります。
太かったり、深く切ると開花まで日数がかかる分大きな花を咲かせやすく、細かったり、浅い位置の剪定では早めに小さめの花を咲かせやすくなります。
剪定から開花まで平均的には45日程度、大体40~60日程度かかります。(気候や品種差があります)
芽の向きは外側を向いているものが良いですが、超横張りの株で無い限り、そこまで神経質にこだわることも無いと思います。
ここを伸ばしたいと思って切っても、それと逆を向いた2番目の芽が元気良く伸びることも良くあることです。
こんな感じのしっかりとした芽があると良いです。
葉はついていたほうが力のある枝が伸びやすいので、あるに越したことは無いですが、無くても芽は伸びますのであまり気にしなくて大丈夫です。
剪定例2 プリンセスアレキサンドラオブケント(昨冬に大苗を8号に植付けた株)
四季咲き性のあるシュラブ(イングリッシュローズやデルバールによくあるタイプ)
は8月中旬〜下旬頃の通常よりも少し早めの時期に切っておくと、遅くても11月上旬くらいに花を咲かせてくれます。
関東での話なので、暖かいところではもう少し早く咲くか、その品種の四季咲き性が弱い場合は、もしかしたら蕾がつかずに終わってしまうこともあるかもしれません…
イングリッシュローズやデルバールローズに多い「シュラブ」は、枝が長く伸びてから蕾をつけるものが多いです。
特に枝が太くて立派だと、なかなか夏以降蕾をつけにくくなります。
秋の咲きやすさは、品種の差がとても大きいので、その品種が、どんなタイプなのかはきちんと把握してからハサミをいれてあげてください。
感覚的には、枝が太く、グングン伸びるようなものだと、秋は咲いたらラッキーくらいで、静観しておくのがベストです。
また、太く勢いのある枝が伸びやすい地植え栽培では、花がつかないこともあります。
肥料を与えすぎると生殖生長に切り替わらないまま秋が終了することもあるので、肥料は控えめがお勧めです。
それでは、剪定前と、剪定後の姿です。
8月27日に剪定を行った例です。
剪定前
剪定後
正面からの様子
この年は、9月の残暑が非常に厳しい年で、例年よりも気温の高い日が続きました。
10月7日開花
少し小振りの良い色の花が咲きました。
その他のバラ 剪定ビフォーアフターアフター
写真はクリックで大きく見られます。
グリーンアイス(ミニチュア)
5.5号くらいの土量の浅鉢で育てているグリーンアイスの夏剪定後の様子です。
ワイフオブバス(シュラブ)
四季咲き木立タイプのイングリッシュローズ、10号鉢で育てているワイフオブバスの夏剪定後の様子です。
補足:施肥について
じっくり秋の絶品の花を狙うのなら活性有機ぼかしがお勧めです。
タイミングとしては剪定後に与えるくらいがオススメです。
蕾がついてきたら、ありんの散布を行います。
冬が早くにくる地域は、PSPを使っていくのもよいでしょう。
勢いよく枝が伸びやすい品種は、しっかり肥料を与えると蕾がつかないまま冬に突入する場合があります。
控えめにし、液肥で調整を行うのもおすすめです。
日照量が日に日に減っていきますので、光合成量が足りないバラにはリバイバルの使用がお勧めです。
栽培環境に合わせて、色々チャレンジしてみてください。
補足:冬の剪定位置について
付け足しで、先ほどのジュリアを例に冬の剪定の位置を…
大体写真の位置を目安に切ることになると思います。
秋のお花は、春のお花に比べ、小ぶりで数も少なめですが、気温の低下でゆっくり咲く事ができるので、香りよく、色も美しく咲くことができます。
また、花もちがよいことも利点です。
ぜひ施肥コントロールを駆使して、極上のお花を狙ってください。
近年の温暖化で、9月上旬でもとても暑い日が多いですが、日照時間は確実に日々短くなりますので、中旬頃までに剪定は済ませておくのがお勧めです。
もし、早く咲きすぎてよいお花を楽しめなかった場合は、早めに切って2番花を狙うか、翌年に少し時期をずらしてチャレンジしてみてください。