バラは冬の1〜2月に休眠します。
この休眠期に行う剪定や誘引、植え替えは、株を若返らしたり、花付きを良くしたり、自分の好みの大きさにしたり…毎年バラを楽しんでいくためにとても重要な作業です!
作業の方法自体は、一度理屈をわかってしまえば案外簡単なものですが、正解が無い、奥がふか~い世界でもあります。
色々チャレンジしながら、バラの最高のパフォーマンスを引き出せるよう頑張ってみてくださいね!
大切なこと3つ!
切る場所は芽の上5〜20mm!良く切れる清潔なハサミで!
枝を切る箇所は、良い芽の5〜20mm上です。大体枝の太さと同じくらいの幅を残して切っておくと失敗が少ないです。
あまり芽の上を長いままにすると枯れ込みの原因になったりします。
また、切り口を斜めにしすぎて、芽の裏側にかからないように気をつけましょう。
切り口を斜めにすると、樹液が切り口にたまりにくく枯れ込み防止になりますが、あまり気にしなくても大丈夫です!
そして、何よりも重要なのが…!
1株変わるごとにハサミを消毒して、清潔な状態で使うことです!株同士の病気の感染を防ぎます。
ピキャットクリアハンディや、ピキャットクリアミニが便利ですよ!
言わずもがな、ハサミはきちんと切れ味を良くしてから使うことも大切です。
昨年伸びた枝が主役!
昨年の春から秋にかけて伸びてきたシュートが、勢いも良く、たくさんの花を咲かせます!
バラは勢いのある枝に優先して栄養を送りますので、その枝を主役にして、剪定や誘引を行います。
いっぱい枝があると、贅沢にたくさんの枝で誘引したくなりますが、春以降大変なことになります…(笑)
古い枝からある程度整理した方が、良い枝にたくさん養分が行き渡りますし、良い結果を得られやすくなります。
春の姿を想像しながら、楽しんで!
実は、バラは剪定や誘引をしなくても花を咲かせます!
しかし、剪定・誘引をすることで自分の思い描くように花を楽しむことができ、バラも、より良いパフォーマンスをすることができる訳です!
でもどんなに経験豊かな人でも、自然が相手ですから思うようには行かないこともしばしば…
あまり気負わずに、春の美しい姿を思い浮かべて、悩みつつも楽しく作業するのが一番うまくいくコツです♪
ブッシュローズの基本的剪定の解説
3年目のハーモニィー(ハイブリッドティー種)を例に解説します。
木にまだついている葉を取りながら、どれくらいに切るかの検討をつけます。
まずは、明らかに枯れている部分や、爪楊枝のようなあまりにも細い枝、不要な細枝、重なってしまっているような交差枝、目安の高さよりも高い部分をおおざっぱに剪定します。
次に、樹形を見ながら外方向に向いた、ぷっくりとしたした良い芽の上で剪定を行います。
あまりにも樹形が外に広がっていてそれ以上枝を張らせたくない場合は、意図的に内を向いた芽で切ると樹幅を抑えることができます。中に向いて出ている不要枝や、細い枝などを樹形を見ながら剪定、もしくは根元から切ります。
枝は、強剪定では最終的に3〜5本にします。
前年の夏に出たシュートが多くある場合はそれを残すようにします。
無い場合は、昨年の1番花が咲いた枝の中下程の所(下図参照)で切ります。
ビフォー・アフターがこちら…
これが一般的な木バラの剪定です。
この例では大きな花が咲く、ハイブリッドティー系統種を取り扱いました。
中輪の花がたくさん咲くフロリバンダ系統やたくさん花数を楽しみたい場合、またあまり木が育っておらず樹勢が弱い場合は弱〜中剪定、ハイブリッドティー系統や大きな花を楽しみたい場合、木がしっかりと育っている場合は強剪定を行います。
弱剪定は木の高さの3分の2、中剪定は木の高さの2分の1、強剪定は木の高さの3分の1になるような目安で行います。
系統別で剪定例を見てみる
一口にブッシュローズの剪定と言っても、実は「系統によってこれくらいで切るのがお勧め」という目安があります。
しかし、バラは何万品種もあり、育てている環境や、前年度の状態、どう楽しみたいかによっても剪定位置は変わってきますので、あくまでもご参考までにどうぞ!
当店の場合は、春の見栄えに重点を置いているので、枝数は気持ち多めに残しています!
ポリアンサ系統 3年目の株(マルゴコスター)
※写真はクリックで大きくみられます。
どんどん枝が出やすいので、大胆にカットしています。
春には丸くこんもりと咲かせるのが目標です。
ハイブリッドティー系統 3年目の株(ブラックティ)
3年目の株なので、昨年の剪定位置より上の部分でカットしています。
まだ、中央の細めの枝を切り取っても良い感じですが、ベーサルシュートが出にくい品種でもあるので、枝を残し目にしています。
フロリバンダ系統 3年目の株(プリンセスミチコ)
3年目の株なので、去年の剪定位置より上の部分でカットしています。
枝が多い場合、上から株を覗いてみて、なるべく枝が交差しないように切ると、混み合わずに済みます。
チャイナ系統 2年目の株(グルスアンテプリッツ)
奔放に伸びるタイプのチャイナローズです。
チャイナやティー系統のバラは冬に休眠しにくく、冬の間も比較的活動を続けているので、葉も落としにくい特徴があります。
あまり深く剪定すると春に勢いが無くなったりします。
基本的には中〜弱剪定で、枝を整える程度がお勧めです。細枝にも花をつけやすいので、枝は多めに残します。
大きくしたくない場合は、冬前くらいから、徐々に丈を短くし、枝も減らしていく方法がおすすめです。
シュラブローズ(イングリッシュローズ、デルバールなど)
近年主流になってきている系等ですが、樹形の幅が非常に広く、ブッシュタイプからクライミングタイプまで様々です。
イングリッシュローズやデルバールなどのブランド品種のシュラブローズは、基本的には木立バラのように強剪定で咲かせると良い結果が出やすいものが多いですが、やはり品種の個性が様々ですので、まずはその品種の説明にそって剪定作業を行う事をおすすめします。
古くからあるシュラブローズは、一般的にクライミング程伸びない半つるタイプが多く、シュラブ(茂み)を作るバラですので、日本ではつるバラとして扱う方が良い結果となりやすいです。
樹勢が強いものが多いので、冬に短く剪定しても春に花を咲かせるものも多くあります。
大きく育てたくない場合は、ぜひブッシュのような剪定に挑戦してみてください。
クライミングローズの基本的剪定・誘引の解説
オベリスクへの誘引
昨年オベリスクに誘引してあった、ルイーズオディエ3年目の株を例にお話しします。
誘引から枝を解き、木にまだついている葉を取りながら不要な枝、枯れ枝、古い枝の検討をつけていきます。
先の方の葉は、後で剪定するので無理に取る必要はありません。
3年目以降の枝を残す場合は、昨年の春に花の咲いた枝2〜3芽を残し切ります。
誘引・仕立てたいものにあうように、枝分かれたいらない枝などを決めていきます。
昨年伸びた新しいシュートを残すようにし、もう花がつきにくくなってきた4年目以上の枝などは根元から切り、主幹を更新するようにします。
この例木の場合、昨年たくさんの良いシュートが伸びているので、オベリスクに収めるために3年目の枝はほとんど切り、昨年伸びた枝を中心に誘引しています。
ただし、オールドローズは古い枝や細枝に花をつけるものもあるので、風通しが悪くならない程度に残します。
迷った場合は誘引した後でも剪定は可能なので残すようにします。
枝はなるべく全体的に隙間ができ無いように 左右に振り分け誘引します。
なるべく等間隔に配置すると、とてもきれいになります。
軸になりそうな太い枝から仮止めしていき、なるべく横に横に巻いていくようにします。
太い枝などは跳ね返りがあるので十分に気をつけて作業します。
枝が中に入っているものは、引き出せるものはなるべく引き出し、無理なものは切るか、中側で巻くようにします。
なるべく水平に誘引することによって、「頂芽優勢」の性質で、より多くの蕾がつきやすくなります。
誘引ひもは、8の字にするよりも、枝が動かないようにしっかりとくくります。
どんどん巻いていきます。
枝は多い方が春の見栄えがしますが、春の花以降はとても混みあうので、美しく整理したいところです。
ここは経験を積んで、その品種の良さを引き出せるボリューム感を追求していけると楽しいですね。
春の花後にも枝の整理はできますので、ぜひ様々挑戦してみてください!
上の枝もしっかり止めて出来上がりです。
細い枝先は切り落とします。
オールドローズなどは細い枝先まで花をつけるものもあるので、わざと誘引せず、上の方で 奔放な感じに仕上げるというのも素敵です。
完成です。
春の様子がこちら!
トレリスへの誘引
昨年春に鉢バラを植え付け、今年初めて誘引を行うヴィックスカプリスを例にお話しします。
作業の流れとしては、オベリスクの時と変わりません。
この株の場合、ほとんどの長い枝が昨年伸びた枝なので、あまり枝の吟味が必要なく、細くて密集しているような部分を取り除く程度で、整枝は十分。
最終的には扇状に枝を誘引するので、大体の枝を枝向きの感じで左右に振り分け、軽く仮止めしておくと作業しやすいです。
なるべく水平に、なるべく等間隔に枝を配置し、固定していきます。
はみ出た部分は曲げて折り戻すか、切り落とします。
ほぼ誘引し終わり、枝の量などを見ながら、最終的な枝の剪定・整枝を行います。
切り忘れた細い枝なども取り除きます。
完成です。
・左の部分
春の様子がこちら!
つるバラの枝の処理について(図解)
誘引したつるバラは、春の花の終わり頃から、新しいシュートを伸ばし始めます。
株元から伸びる「ベーサルシュート」や、枝の途中から長く伸びる「サイドシュート」などです。
ベーサルシュートは、春の開花中くらいからニョキニョキと伸び始めます。
3年目以降は、古い枝と新しい枝が、混在する状態となり、どの枝を残すか、枝の選定と剪定が必要になります。
その方法を図解します。
古い枝を積極的に整理
良い枝がたくさんあるので、積極的に古い枝を切っています。
ボリュームの出やすいバラにおすすめです。
ランブラー系統も、古い枝に花はつきにくいので、積極的に新しい枝に変えます。
古い枝も残し、枝数を多めにする
古い枝も残しつつ新しい枝も加えます。枝数が多めに残ります。
オールドローズや、あまり葉が密集しないタイプにおすすめです。
ナチュラル感が欲しい場合も、こちらが向きます。
花柄を切った3年目の枝は縦にしても花が付きやすくなります。
枝を誘引し直してバランスを整えます。
先ほどのヴィックスカプリスの翌年の状態
翌年はまた多くの枝が出て、まさにボーボーの状態でしたので、ほぼ古い枝を整理し、誘引をし直しています。
・ビフォー
・アフター
・春の様子
(表からの写真が見つからず、前の年とは逆の裏側からの写真になってます。)
剪定・誘引のコツ!ポイント!
良い芽がない!どこで切れば!?
充実した良い芽は、まだ伸びておらず、プクリと丸く膨らんでいる芽。
ちなみに、芽は葉がついているところの根元に必ずあります。
でも、良いところの芽が虫に喰われていたり、昨年の生育状態により、なかなか良い芽がない場合も…
良い芽では無くても、ひとまずは理想の高さや向きにある芽の所でカット!
順調に花をつけることもありますし、バラがその芽を気に入らなければ、違うところから良い枝を伸ばすこともしばしば。上から2番目の芽の方が勢いがよい…なんていうのも、良くあることです。
あまり決めつけず、神経質になりすぎずが良いですよ〜
充実した枝って!?
良く耳にする「充実した枝」というワード。
果樹なんかでも良く使われますが、バラで当てはめると、枝の真ん中の白いわたのような髄(ずい)の部分が小さく、木質化が進んでいる枝の事を言うようです。
写真の様に、枝に白い筋が入ってくると、だいぶ木質化が進んでいる目安になります。
逆に、昨年伸びた枝の中で、同じ太さの枝でも、皮が薄く髄が大きく、表面もツルッとしている枝は、若い枝と言われ「充実していない」枝と呼ばれるようです。
じゃあ、その若い枝がダメで、木質化が進んだ枝が全部良いのかというと…そうとも言いきれないのがバラの面白いところ。
確かに、翌年出た枝で、写真の様な白い筋が入っていて、芽がぷっくり赤いものは、春にはとても良い枝を出しやすいです。
しかし、ツルッとした枝の、赤い芽も良い枝を出します。
なので、ピーキャットでは「充実している」というワードはあまり使いません。
とりあえず芽がぷっくりと良い芽だったら、どちらもチャンスはあります。
ただ、切ってみて「スカッ」としたり、髄が茶色くなっている、ふにゃふにゃしている(つるバラの「しなる」とは違いますよ)ような場合は、冬の間に枯れこんでくる可能性が高いです。
剪定後、様子を見ながら、枯れ込んできたら、すぐに切りましょう!
鉢替えと剪定はどちらが先!?
木立性バラの場合、仮剪定してから植え替えした方が作業性がいいです。
仮剪定というのは、本来切る予定のところよりも長めに切って、いらない枝は整理しておく事です。
枝をもう切ってあるので、植え替えの際、根を整理してもダメージが少なくなります。
時期が2月以降で遅めの場合は、本剪定でも構いません。
なぜ、12月1月に本剪定をしないかというと、近年、早めに剪定を行って、春の早くから芽がモリモリ動いた株は、安定しない気候でブラインドになったり、暴風で枝が折れたりする被害に遭うことが多いです。
ツルバラの場合、誘引してから植え替えは大変なので、前年の誘引を解き、軽く整枝を行ってから植え替え、誘引するといいですよ。
時期としては1〜2月になります。
つるバラの枝の曲げ方
写真は、冬の長尺鉢バラの箱詰めされた様子です。
箱の高さは80センチ、7号鉢の高さが20cmくらいあるので、実質60cmの高さにまで枝を曲げて入れらています。
コツは…
・もともと曲がりやすい方向に逆らわない
・引っ張らない
・枝の一箇所に集中して負荷がかからないようにする
・少しずつ押すように曲げる
で頑張れば、冬場の枝なら結構曲がります。
もし少し折れてしまっても、中が見えるほど裂けたり、組織がちぎれたりしなければ大丈夫です。
折れた箇所は、癒合剤を塗り、接ぎ木テープなどで保護してあげましょう。
写真撮影のススメ
一体どこで切っていいのか…、いまいちこれで合っているのかわからない…
そういう悩みはつきものですよね。
でも、はっきり言ってこれという正解なんて本当は無いようなもの!
育てている環境と目の前のバラと、自分の理想で、正解が出てきます!
ぜひ、剪定・誘引前の写真、剪定・誘引後の写真、春の写真を撮っておいて見て下さい!どこをどう切ったら、こんな枝が出て、こんな風に花が咲いた!
というのが客観的に見られるはずです。
目の前のバラが「先生」というわけですね!
いかがでしたでしょうか〜
偉そうに説明しましたが、私は毎年、これで正解!と思って剪定・誘引を行っていません…
より良いバラ栽培を求めて、育て方自体が毎年少しずつ変わっているので、毎年1年生なんですよね!
剪定や誘引でバラが枯れてしまうことはほとんどありません!(もし枯れたとしても、それは何か違う要因が一緒にあるはずです。)
なので、ぜひ気楽に!
基本的な事だけでも何となく理解してもらって、剪定や誘引への恐怖感を少しでも無くしていただければ〜と思います。