皆さんが理解しにくい「枝枯れ病」を特集してみます。

枝枯れ病は本当に病原菌によるものなのか?それとも違うことで起こるのか?
知っておくととても役立ちますよ!

枝枯れは大きく分けて3つのパターンがあります。

・剪定した枝の先から黄色く枯れていく
・枝の中間当たりから黒くなって変色していく
・株元の枝から黒く変色していく

これはすべて枝枯れ病という病気なのか?
同じ病原菌による症状なのか?

しっかり解明していきましょう!

枝枯れは病気なのか?


枝枯れ病、腐乱病、すそ枯れ病、疫病…
枝枯れを起こすとされる病気にはこのような病名が付いています。

「なるほど!やっぱり病気なんだ!」

確かに、枝枯れさせる菌が起こしますから病気と言えますが…

皆さんはこれを頭に入れてみてください。
人間の回りも病原菌だらけですよね?
歯周病菌、水虫、大腸菌感染など、いろいろあります。
その他、雑菌が入って化膿したり、いろいろ症状を起こします。

皆さんはそういう菌に囲まれていますが、皆さんいつも感染していますか?

枝枯れ病は、私自身の解釈としては人間と同じように考えています。

つまり、雑菌がバラの体内に侵入して枝枯れとなる!
実際、枝枯れ病痕からはさまざまな雑菌が発見されます。

これを頭に入れて、各パターンごとに考えてみましょう。

剪定箇所から枝枯れが起こるパターン!


「剪定箇所から黄色や茶色くなって下に広まっていく…」

多くは冬の剪定で起こりますが、生育不良の株だとシーズン中でも起こります。
これはどうして起こるのか?

まず、この枝枯れを起こしやすい株はどういう株なのかを考えてみます。

・根にダメージを負っている株
・生育不良の株
・大苗
・肥料過多で育った株

この順番に、症状が出やすくなります。

そして、この株に共通していることがあります。
それは、「樹液の流れが悪い」ことです。
樹液の流れが悪いと、雑菌や乾燥に対して抵抗できなくなります。

人間でも同じですが、傷口から血が出ることで雑菌の侵入を食い止めますよね!
枝枯れを起こす株は、剪定した跡から樹液が流れてこないんです。

また、剪定した後はとても乾燥しやすくなります。
乾燥することで枝の水分が急激に奪われ傷んでくるわけです。
秋や冬は乾燥した空気にさらされますから、余計に出やすくなりますね。
ですから、剪定した枝の先から樹液が流れ出るぐらいでないと乾燥は防げません。

いかがですか?
これでおわかりいただけると思います。

「剪定した箇所から樹液が流れ出ないような株は枝枯れが出やすい!」
こう考えてください。

このための対策は、水涸れをさせないこと!
「生き物にとって水は命」です。

そして、剪定する際は剪定バサミをピキャットクリアで消毒しながらおこなうこと!
剪定バサミからの雑菌侵入はとてもよくあることです。

それと、ピキャットクリアは常用すること!
冬でも月に2回ぐらいはピキャットクリアを噴霧しておきましょう。

できれば、剪定箇所には癒合剤のカルスメイトを塗っておきましょう。
樹液が出てこない場合は使ったほうがいいですね。

ちなみに、当店の「剪定済み鉢バラ」は剪定してから皆さんにお届けしますが…
剪定したところから枝枯れが起こるということはまず起こりません。

根元から黒く変色して枝枯れを起こすパターン!

新苗の場合1:疫病

ひとつは疫病です。すぐに隔離もしくは廃棄すべきです。
この疫病は、生産者が水はけの悪い畑で苗生産したときに起こります。
買った新苗の多くがこの症状を出す場合は、まず疫病だと考えてください。

新苗の場合2:接ぎ木部分から感染

もうひとつは接いだ際の活着の甘さです。
簡単に言いますと、接いだ活着面が小さくて地上部に水が送れないような状態ですね。
もしくは、雑に接いだ活着面のところから雑菌が侵入して症状を起こします。
この場合は買った新苗の中で、出ても1本程度です。

これについては、皆さんが何か出来るということはありません。
至急、購入した店に問い合わせてみましょう。

購入したばかりの大苗の場合

大苗だった場合は、原因は多数あります。
ただ、買った大苗の多くがこの症状を起こした場合はまず疫病です。
症状が見られるのが1本程度では、疫病でないことも多いですね。
昨シーズンに大きなダメージを受けた株なども同じ症状が出ることがあります。

これについても、皆さんが何か出来るということはありません。
至急、購入した店に問い合わせてみましょう。

育てていた鉢バラの場合

次に、皆さんが育てていた株や鉢バラで起こった場合です。
これ、ほとんど起こりません。ですが、稀に起こします。

・昨シーズンに軽い水涸れを頻繁に起こした場合
・生育不良なのに肥料過多にした場合
・株元が割れなどで傷ついている場合
・土に疫病を起こす菌が存在していた場合

まず起こらないとは思いますが、起こった場合の原因はこのようなことです。

それと、枝すべてではなくて1本程度にこの症状が起こる場合があります。

これはバラが、「もうこの枝はいらない!」と判断した場合に起こります。

枝の中間から黒くなって枝枯れを起こすパターン!

「枝の中間当たりから黒くなって…」

このパターンは、寒さに弱い品種、枝枯れしやすい品種でよく起こします。
また、根が弱くて樹液の流れが悪い株でも起こります。
さらに、冬に栄養過多になった土に植えている場合もよく起こります。

多いのが枝の凍結ですね。
冬に凍結では見た目は変わらず、春になって気温が上がってから患部が黒く変色することが多々あります。

それと、他の枝枯れと同じように菌の感染でも起こります。
菌は枝の内部に侵入して内部を腐らせますが、それが枝の中間ほどで表にも症状が出たということです。
この場合、枝を切って中の白い部分を見てください。
そこが茶色になっていたら、菌が侵入した形跡です。

気温が低い→病原菌は動かないけれど枝が凍る
気温が高い→枝は凍らないけれど病原菌は活発

どちらでも起こりますので、どちらで起こったか見極めましょう。

枝枯れ病の対処法!

枝枯れ病を出さない方法は以下になります。

(1)疫病苗を絶対に入れない
(2)除菌・洗浄でピキャットクリアを定期撒布する
(3)土を栄養過多にしない(特に冬)
(4)水枯れさせない
(5)剪定ハサミは除菌してから使う

この表では、1,2,3になります。

枝枯れが出てしまった場合は、とにかく枯れていない部分まで切ってしまうことです。

枝先なら、まだ枝が変色していない箇所の芽の上1cmぐらいのところで切ります。
枝の中間も同じです。下まで枝の変色があるようなら、株元のところで切ります。
株元から黒く変色する場合は、これはもう手遅れです。
体内除菌してから植え直し、様子を見るしかありません。