有機栽培は自然の摂理を利用する栽培です。ここでは自然の摂理を自然のサイクルと考えてください。

植物栽培では、とかく病害虫被害が嫌われます。
少し病気が出たら殺菌しよう、少し害虫が出たら殺虫しようと考えます。でも、ちょっと考えてください。

害虫が居ないと、それを餌にする益虫は存在できません
病原菌となる糸状菌が無いと、それを餌にする放線菌が居ません

アブラムシが居ないとアブラムシを補食するクサカゲロウやテントウムシやヒラタアブが姿を現すことはありません。
病原菌となる黒点菌やベト菌、土壌のネコブセンチュウが居ないと、それを捕食できる種類の放線菌は居なくなります。

慣行栽培は害虫も益虫も存在を否定する栽培です。病原菌もセンチュウも放線菌も存在を否定する栽培です。
自然の摂理が無い栽培なのでそれはそれで良いわけです。

ということで、有機栽培には天敵を確保するためには害虫も病原菌も欠かせないというのは理解できたと思います。
が…
必ずこう考えますよね?

病害虫が居たら作物に被害が出るじゃないか!

そうですね、だから被害に応じて対策する必要があります。
絶対に被害を受けられない場合は、これは非常在の状態ですよね。これは前述したとおりです。
でも、多少の被害が出てOKの場合、被害はリスクとして飲み込める場合も必ずあります。
まずは常在と非常在を区別できる能力を身につけてください。

常在OKとなれば後は蔓延させないこと、被害を最小限に抑える技術が必要になります。
ここは栽培技術としての高いスキルが必要になりますので、後で詳しく解説します。

ここでは3つを覚えてください。
■病害虫を減らす技術
■病害虫を自分のところで増やさない技術
■病害虫をできるかぎり呼び込まない技術

詳しくはいろいろ書きますが、ここで理解してほしいのは「どれも100%など求めていない」ということです。

ここが有機栽培の難しいところです。でも、だからこそ自然や生態系に優しく、人々への安全も担保できます。
これを農業で解説します。

慣行栽培農業の場合、農薬を使い化成肥料を使って100の収穫を目指すとします。
豊作だと100を超え、不作だと100を割る計算をします。
有機栽培の場合、あらかじめロス率をいうのを計算しています。
100の収穫計画のうち、20は病害虫リスクでロスしてもかまわないと考えます。
豊作だと80を超え、不作だと80を割る計算をします。

これ、同じように思えるはずです。
でも、躍起に病害虫対策して被害ゼロを目指す慣行栽培に比べて、有機栽培ははじめから20はロスしてかまわないと考えます。
ロスの20は大きな損失に見えますが、実は費用対効果で考えれば大差ありません。
実際のところ、有機栽培のほうが増収しちゃうのです。
これは農業なのでここでは解説しませんが…(*^▽^*)

常在として良い病害虫の存在を受け入れられると、栽培は大きく変わります。
これが有機栽培の優れたところになります。