薬剤使用においては「曝露」というのを学校でも習ったと思います。
薬剤の効果も安全性も、この「曝露」がとても大事になっていきますが…
どうも農業では話が合わない…
でも、こういうのは目線の違いで見えてくるものも違ってくるので仕方ないかな?とは思います。
世の中の薬剤はもちろん農薬だけではありません。殺菌剤や殺虫剤も農業のためだけに存在するモノではありません。
ですから、広く殺菌剤や殺虫剤としての基礎を話してみます。
が、ここではとても書き切れないので濃度と曝露と耐性に絞って解説してみますね!
だたね、これは教科書でも何でもないので…単なる読み物としてどうぞ!(*^▽^*)
薬剤の濃度とは?
濃度をppmという単位で現します。
これを一般家庭や水道水でも使われている次亜塩素酸ナトリウムを例にとって解説します。
次亜塩素酸ナトリウム100%、つまり次亜塩素酸分子しかない状態の濃度は1,000,000ppmです。
次亜塩素酸ナトリウムは12%とか6%とか3%という単位で販売・流通しています。
次亜塩素酸ナトリウム12%は液体中に次亜塩素酸が12%含有されているということです。120,000ppmとなります。
次亜塩素酸ナトリウム6%は60,000ppm、次亜塩素酸ナトリウム3%は30,000pppmとなります。
キッチンハイターは50,000ppm、ほ乳瓶除菌のミルトンは20,000ppmで販売・流通されています。
実際に使用する濃度は100~500ppmです。
水道水は1ppmが含まれていて、水道水とは次亜塩素酸ナトリウム1ppm溶液となります。
農薬の場合も同じ考え方です。ただ、いろいろな農薬がありますので目安で書いてみます。
農薬成分しかない状態は1,000,000ppmです。
流通濃度は500,000ppmです。
使用濃度は500ppmです。
これは目安です。
流通濃度の500,000ppmを1000倍希釈すれば500ppmですよね。
薬剤というのは流通させるために高濃度になっています。それを希釈して使うことで効率化しています。
薬剤の成分が1,000,000ppm
流通の濃度が500,000ppm
使用の濃度が500ppm
こういうことになります。
有効濃度とは?
ここが大きく間違えている人がいますのでしっかり覚えてくださいね。
次亜塩素酸ナトリウムの使用濃度は100~500ppmです。これは使用濃度です。
では、菌に対しての有効濃度は?
実は1ppmでも効果があります。
水道水はこの1ppmでコレラ菌や赤痢菌や大腸菌、そのほかウィルスなども壊してしまいます。
この効果というのは濃度だけではなく、量や時間も関係してくるのでこれはまたいずれ…
でも、1ppmで水道水の安全は守られています。
これは農薬も同じです。
使用濃度は500ppmですが、最小有効濃度は農薬にもよりますが数ppm程度です。
つまり、数ppmから上がすべて菌や害虫に対しての有効濃度となります。
ただ、これは農薬成分によります。最小有効濃度が数十ppmの場合もありますし、もっと高い場合もあります。
500ppmで散布すれば500ppmが病害虫に曝露して効果を出すと思っている人が多いですが、実際の有効濃度はもっと低いわけです。
薬剤成分は失活する運命!
500ppmで散布してずっと500ppmなら嬉しい反面、農薬なら農薬残留基準値チェックで全てアウトになりますよね(*^▽^*)
薬剤はいろいろな要因で失活していきます。というか、安全のために失活する薬剤を使用します。
もし、いつまでも残れば?
ずっと毒性が続きますし、人体にも環境にも多大な被害を出すことになります。
そして、この薬剤が失活するスピードは薬剤によって様々です。
超ハイスピードで失活するのはご存知の塩素系ですね。
有機物に触れる、紫外線に当たるなどで超ハイスピードに失活するので薬剤の効果を残すことができません。
効果を残せないということは高い安全性を持つことになりますが、一方で持続効果はゼロという弱点があります。
強い殺菌力と高い安全性を持つのでキッチンやほ乳瓶除菌などに活用されています。
農薬の多くは残効性を持ちます。
効果が1週間持続するとか、10日間は出荷できないとかは残効性ですね。
1週間後に効果を失うということは、失活していって1週間後に最小有効濃度を下回るということです。
濃度が下がっていくということですね。
この濃度は1週間後に急激に落ちるのではなく、1週間かけて徐々に落ちていきます。
ですから、500ppmで散布したら3日後には200ppm、1週間後には数ppmという感じですね。
実際は濃度が高いほど落ちるのが早いので、数日で半分以下に落ちるケースが多いです。
また、この失活というのは様々な条件で起こります。
雨が降る、紫外線に当たる、葉っぱが汚れている、葉っぱのワックスが多い、土に落ちる、有機物に触れる…
薬剤は失活するモノなのです。
500ppmで散布する理由
200ppmでも効果があるし、数十ppmでも有効濃度であれば…
「じゃあ、薄めて散布した方がお得じゃねえか!」って、そう考えると思います。
もちろん、それでも効果は出せると思いますよ。
でも、効果というのは強弱があります。0か100かではありません。
だから、たいした効果が得られなくて良いのなら薄めれば良いと私は思います。
というか、病害虫の活性が低いのなら薄めて散布すべきだと私は思います。農水省はダメとしていますけど…
500ppmで散布しても、実際に病害虫に曝露する濃度はかなり失活した後です。
200ppmならさらに失活した後です。
メーカーが500ppmで最適な効果を出せるとしているので、500ppmで使うのが最適だと考えましょう。
農薬漬けってどういうこと?
これについてはけっこう反論を受けましたが…昔から言われていたことなんでねえ…
もう20年前ぐらいかな?
つまりは、残効性を持つ農薬を最小有効濃度を下回らないうちに次々と農薬散布することを「農薬漬け」と揶揄していたわけです。
今は農薬を適正利用すればできないことですけどね。昔は酷かった…
雨が降る前に予防薬、雨が降った後に治療薬、ハダニは殺ダニ剤が効かないから3日連続散布、土壌消毒として庭の花壇にダコニール潅水…
あ…バラのガーデニングではまだ言ってる先生が居るねえ(*^▽^*)
最小有効濃度を下回らないうちに次々と農薬散布していく…
これを農薬漬けと呼んでいました。
耐性ってどうして起こるの?
病害虫に薬剤耐性を持たれてしまうと、その薬剤が効かなくなります。
これは農業だけのことではありません。たとえば厨房、病院でも起こっています。農業だけの問題ではありません。
身近で言えば…ゴキブリの殺虫剤って一時期はなかなか効かなかったですよね!
この耐性は「残効性が有る薬剤」に対して起こります。
つまり、病害虫が薬液にずっとさらされ続けていると、そこで生き残るモノが現れます。
それがずっと生き死にを繰り返すと、病害虫が慣れてしまって耐性を持つことになります。
一方、残効性が無いモノは病害虫に耐性を持たせません。
薬液にずっとさらされ続ける事が起こりませんので、耐性を持つ時間がゼロなんです。
ということで、「薬液にずっとさらされ続けていることで病害虫が薬剤耐性を持つ」が理解できたと思います。
では、薬液にずっとさらされ続けるというのはどういう条件でしょうか?
■使用回数が多いことで最小有効濃度以下に落ちない
■濃度が高く最小有効濃度以下に落ちにくい
つまりは、使用回数や希釈濃度を低く(濃くする)ことで薬品耐性を持たせやすくなります。
効かせたいからと不正利用が続いて耐性を持たれてしまうケースが昔は多くありました。
いや、家庭菜園やガーデニングでは未だにとんでもない使われ方がされています。
薬剤成分は同じ、病害虫も同じなので、耐性を持った病害虫は農業だけではなく家庭菜園やガーデニングでも発生しています。
農薬を薄めて使っても耐性は持たれるのか?
残効性のある農薬を規程よりも薄めて使うことで病害虫は耐性を持ちやすくなるのか?
私はこれはあり得ないと考えています。あくまで私の考えです。
ですが、農水省はそうなると言っているので農水省の見解はそうです。
農薬使用の方々は農水省に従うしかないですよね。私は自分の考えで動きますけど…(*^▽^*)
上記で見てもらえば、病害虫に対する農薬曝露濃度はまったく一定しないのは理解していただけると思います。
最小有効濃度以上であれば効果を示すわけですし、効果は0か100ではなくパーセンテージです。
なのに、500ppmを200ppmで散布することと耐性と何の関係があるのか?
蔓延時期はしっかり効かすために適正濃度、病害虫の活性が低い時期は薄めて散布することに問題があるどころか、良いことだと思います。
あくまで私はそう考えている!ということです。私の考えなので批判しないでね!
私は農薬成分は使わないので考えを言っているだけです。
残効性ある農薬は耐性を持たれてしまう宿命ではありますが、それは農薬を薄めて使うからなのか?
そうではなくて、濃度を高めたり使用回数が多いからではないのか?
私は日本の農薬使用量を減らし、毒性を弱めるためにも農薬を薄めて使うことにもっとチャレンジして欲しいと思っています。
それで効果を出せれば良いわけで、それで耐性を持たせなければ良いわけです。
でも、正直言うと薄めて使うと耐性を持たれる話は、どこかが都合良い話を持ち上げただけでどうも胡散臭いなあと…
あくまで私個人はそう考えていますが、しっかりしたエビデンスなどあればそちらを信用してください。
私は農薬を使用していないので、私がとやかく言うことではないかもしれません。