私たち昔ながらの有機農家は「有機栽培」や「オーガニック」という言葉を有機JASから奪われてしまった歴史があります。
戦後、日本は近代農業全盛であっても有機農家は残っていました。私はその農家から栽培を習って現在に至るのですが…
その有機農家をことごとく粛正しようとした有機JAS…
一体、何が起こったのか?これを時系列で解説します。
昔から存在していた有機栽培
私の祖父は酪農家で、その牛糞をわざわざ遠方からトラックで買いに来ていた京野菜作りの農家(達人)がいました。
私はその達人から有機栽培技術を習いました。
達人は近代農業化で農薬や化成肥料を使った栽培が主流になる中、高品質の野菜を料亭などに収めるために昔ながらの有機栽培を頑なに続けていました。
もちろん、達人は農薬の危険性や環境破壊のことなどまったくわかりませんし、意識もしていません。
ただただ、美味しい野菜を作り続ける有機栽培をやっていました。
昔とは育てる品種が変わってきた!
達人は京野菜を作り続けてきました。伝統ある野菜ですから、昔のままの品種です。
一方、巷の品種は品種改良され続けてきた品種です。
農薬や化成肥料に頼れるので、より甘く、苦みはなく、より大きく、よりたくさん…ドンドン品質が上がってきました。
ところが!
より甘く、苦みは無く、より大きくは病害虫も大好物(*^▽^*)
品質が上がれば上がるほど、昔と違って病害虫がとても出やすい品種に改良されていきました。
(現在の品種改良は病害虫に強いこともテーマになっています)
よって、食生活は豊かになるのとは引き替えに、農薬曝露の危険や環境破壊が起こることになりました。
有機栽培を改良する必要が出てきた!
品種改良が続き、農薬や化成肥料に頼らないと育てるのが難しい品種をいかに有機栽培で成し得るか?
私は達人から教えてもらった有機栽培をさらに改良して、誰にでもこなせる有機栽培を構築するためにいろいろ研究開発をしていました。
達人技というのは感覚的なことが多く、誰にでもこなせるとは思えませんでした。
ですから、一般の方々でも実践できる有機栽培を構築しようと頑張っていたわけです。
ここでの有機栽培のテーマは、品質向上・農薬曝露の危険性回避・環境保全となります。
有機JASがやってきた!
いきなり有機JASが襲来してきました。
「有機農業とは、化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう」
この当時から「農薬擁護 VS 農薬批判」の言い合いはありました。
有機JASは「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しない」と言い切ったわけです。
そして、それを有機栽培だとかオーガニックだとしてしまいました。
当時、有機JASが出てきたときに私ら有機農家は…
「なんだこれ?無理・ムリ・むり(`Д´)」となって、有機JASは拒否しました。
理由は、私たちは品質向上や環境保全で有機栽培をやっていたわけで、農薬や化成肥料を嫌うために有機栽培をしていたわけではありません。
有機JASの内容を見たら…一応はプロですから品質向上が見込めないことはすぐに理解できました。
そして有機JASを拒否すると…次々と責め立てられ、「有機」と「オーガニック」の言葉を奪われてしまいました。
なんかねえ、先住民族が非国民扱いされたみたいな(*^▽^*)
農水省も来たし、県庁からも電話が来るし、それでも決して譲ることはなかった!わけではなく…
ほどよいところで自然に手打ちみたいな感じなのかな?
私たち有機農家は農薬も化成肥料も使うことがある
私たち有機JAS以外の有機農家は農薬や化成肥料を使わないと決めているわけではありません。
結果としてそうなることもあるし、場合によっては使うこともあります。
理由は、オーガニックや有機栽培の本来の意味にあります。
私たちの有機栽培は
×農薬や化成肥料を使わない
○農薬や化成肥料に頼らない
となります。
有機栽培を実践するには農薬や化成肥料が使えないという選択をしますが、使わないという選択ではありません。
本来のオーガニックを取り戻すために!
自然や生き物のチカラを利用して美味しく健康的な作物を!
有機栽培は農薬や化成肥料や遺伝子組み換えを敵視する栽培ではありません。
なのに、有機JASが慣行栽培を悪いものだと決めつけ、さらに有機栽培と慣行栽培を敵対させることをしてしまいました。
私は本来の有機栽培は達人から引き継いだ有機栽培だと考えています。
この有機栽培を実践してもらえれば、必然的に食は安全となり、農薬曝露は関係なくなり、自然や生き物は蘇る!
そのためにも、ここでは皆さんには本当のオーガニックって何?を考えてもらおうと思います。
辞書で調べてみたら?
言葉って辞書で調べた意味と巷で実際に使われている意味が違っていたりしますよね。
そして、巷で使われている意味が強くなると辞書での説明が変わったりもします。
オーガニックってどういう意味でしょうか?
■「有機の」の意
■有機農業による生産物であること
では、有機とはどういう意味でしょうか?
■生命力を有する意
■有機化学または有機化合物の略
では、有機の反対語の無機とはどういう意味でしょうか?
■生命力がない意
■無機化学または無機化合物の略
オーガニックは「有機の」の意味であるなら、「生命力を有する○○」がオーガニックですね。
わかりやすくこうしましょう!
オーガニックとは、生物が作り出すという意味です!
生物が作り出すのが有機物、生物による自然のサイクルで作り出すのが有機物
こう考えればカンタンですよね。
もちろん、厳密に言えば生物は有機物を無機物に変えることもするので違うと言えば違います。
でも、いいんじゃないかな?
「生物が作り出す」ということなら、オーガニックも有機もとてもわかりやすいと思います。
となると?
生物が作り出すというのは「自然のサイクル」や「自然や生き物が起こすこと」を意味します。
つまりは、自然のサイクルがあることをオーガニックとすれば良いですね。
昔の人は知っていた!
「自然のサイクル」や「自然や生き物が起こすこと」や「自然や生き物のチカラを利用する」
定義的なことはどうでもいいですが、こういう感覚であれば良いですよね。
そして、昔の人は「自然や生き物を上手く利用すれば美味しい作物が収穫でき、そうでなければマズい作物となるか収穫もままならない」というのは当然ですがわかっていました。
昔は農薬や化成肥料が無いわけですから、自然や生き物を上手く利用するしか無かったわけです。
そこで発達したのが有機栽培技術です。
ということは?
「自然や生き物のチカラを利用して美味しく健康的な作物を作りましょう!」
これがオーガニックであり、有機栽培ということです(*^▽^*)
オーガニックの意味が変わってしまった…
でも今は…
農薬憎しの想いが強すぎて、農薬を使わないことがオーガニックになっちゃいました。
つまり、農薬を使った栽培の反対語みたいに使われちゃっているわけです。
これはすべて農水省がやらかしちゃったんですね。
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我が国では、平成18年度に策定された「有機農業推進法※注1」において、有機農業を「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう。」と定義されています。
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このおかげで、オーガニックは農薬や化学肥料を使わないことになっちゃいました。
でも、農薬を使う栽培の反対語は無農薬栽培ですよね…
現場の栽培技術を机上の理論で壊しちゃったのがオーガニックでもあるのです。
オーガニックを取り戻そう!
「自然や生き物のチカラを利用して美味しく健康的な作物を作りましょう!」
これが本来のオーガニックです。
つまり、近代農業と良い意味で品質を競い合うための存在がオーガニックなわけです。
オーガニックは安全だというのは、これは結果そうなるということです。
自然のサイクルを作り維持するためには、農薬の殺虫剤や殺菌剤が使えません。結果として安全・安心だということです。
まあ、人それぞれ考え方は違いますが…
どこよりも美味しく、どこよりも綺麗であることを追求するのがオーガニックだと私は考えています。
有機JAS以外の有機栽培が存在する理由は
上記に書いた「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として」としたのが有機JASです。
「自然や生き物のチカラを利用して美味しく健康的な作物を作りましょう!」と掲げてやっているのがそれ以外の有機栽培です。
まあ、他にも考えはあると思いますが、私はそうです。
環境第一とか、妻が農薬に弱く…なんてのもあると思います。
人それぞれ、いろいろな考えがあってされているのが有機栽培です。
オーガニック栽培=有機栽培
そう考えれば、私の有機栽培は間違ってはいないはず(*^▽^*)
最後に…
有機JASについては、農水省のやり方がエグかったのでがあがあ文句を言っていますが、有機JAS自体は必要で今後は発展していくべきだと考えています。
ただ、有機JASも大事ですが有機JAS以外の有機栽培も大事!もちろん、慣行栽培も自然栽培も大事です。
批判して自分を持ち上げることではなく、お互いが切磋琢磨して発展していく…
農水省のようなエグいやり方ではなく、お互いが高め合えるような日本の農業になればと思っています。
有機JAS以外の有機栽培は批判され続けた歴史があります。
でも、その技術は慣行栽培でも活用されていますし、これからの時代にも欠かせない技術となるはずです。
きっと…