土中の放線菌が増えると土中の糸状菌(病原菌)が食べられて病気にかからなくなるというのは本当か?
これね、すごく誤解されてます。
誤解されたのか、それとの何か商的なモノが本当のことを婉曲させてしまったのか…
真意はわかりませんが、とても間違えています。
これ、農家でも間違っています。
黒星病や炭疽病などを阻止するため、放線菌を土に入れて土中の糸状菌(病原菌)を退治してもらおうとします。
放線菌は納豆菌などの枯れ草菌が多いですね。
で…
「おいおい、病気が止まんないよお!」ってなります。
どうすれば良いかはここでは書きませんし、来月は有機土壌セミナーをやります。
まずは、なにが間違えているのかを知っておきましょう。
善玉菌とか悪玉菌とかを信じていませんか?
善玉菌とか悪玉菌というのを聞いたことがありますか?
これ、人間の腸内にいる腸内細菌のことです。細菌だから善玉、「玉」ですね。
有機栽培が流行すると、栽培でも土の中に善玉菌とか悪玉菌がいるように言われ出しました。
でも、ほとんどが善玉菌→放線菌、悪玉菌→糸状菌の事だと思われます。
ということは、善玉菌→善線菌、悪玉菌→悪線菌と読んだ方がいいのですが、まあそれはどうでもいいですね。
ズバリ言います。
放線菌が良い菌で糸状菌(病原菌)が悪い菌というのは、これは人間が栽培する上での善悪です。
自然では、どれも善玉菌です。
自然では常在する菌は良い菌です。非常在の菌は悪い菌です。
ですから、放線菌が糸状菌を食べ尽くす必要はどこにも無いわけです。
ある程度は放線菌が糸状菌を食べたとしても、土中の微生物はその環境に合わせたバランスを取ろうとします。
結果、放線菌だけが大幅に増え、糸状菌だけが食い尽くされるなど、自然では起こらないということです。
糸状菌を知れば滑稽なことに気づきます
糸状菌が植物の病原菌(地上部)の大半になっています。
この糸状菌はカビ菌でもあります。
この糸状菌は菌糸という細い糸状のモノを伸ばして増えていきます。そして胞子というモノを作ります。
この胞子はやがて空中に放出され、空気中を漂います。
さて、この糸状菌を土中で放線菌に食べてもらって糸状菌を殲滅したいという考えですが…
空気中に放出された胞子はどうするの?
糸状菌の菌糸が次々食べられたとしても、胞子がいっぱい飛んでいたら次々と植物に付着して発芽していきますよね?
だから、病気は止まらないんです。
放線菌を増やすのは有効なのか?
もちろん、有効ではあります。
でも、だからと病気を押さえ込めるかといえば、菌糸を食べ尽くすなんて自然界では絶対に起こりません。
ほどよく存在するようになりますので、気温や湿度が合えば病気はとても出やすくなります。
また、空気中に放出された胞子は土中には存在していません。だから放線菌も食べることはできません。
放線菌は地上には菌糸は伸ばさないので(*^▽^*)糸状菌も強し!ですね。
じゃあ、どうするのか?
おいおい、そこは有料でしょ?(*^▽^*)
いや、いろいろなアプローチで病気を止めにいきます。
このいろいろなアプローチが農薬使用を凌ぐことがあるので、減農薬として慣行栽培農家が有機栽培技術を取り入れることがあります。
無農薬というのは、このいろいろなアプローチだけを使って成せるモノです。
ヒントとしては、糸状菌は菌糸にアプローチすることよりも胞子にアプローチしたほうが効果が高くなるということです。
これ以上はセミナーで!
まとめますと…
放線菌を増やして糸状菌を!というのは、病気対策としては土壌消毒や化成肥料のみ使っている畑とかにはある程度効果はあります。
それ以外は、病気対策としてはまったく足りません。
有機栽培では、あくまで土中は微生物バランスで成り立っています。
何かが増えて何かが減る、何かをたくさんにすることで何かを駆逐するという考え自体が有機ではないですよね!